南海放送60年史
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8第2節 多額の設備投資と厳しい決算 今治方面(今治・菊間)と島嶼部(大三島)に向けては、新たに本社から高縄山系の大月山を経由するルートを開設した。大月山の鉄塔と局舎は、KDDIから2004年10月に購入した施設で、2007年5月に運用を開始した。翌6月には、今治中継局がデジタル化した。東西に長い愛媛県内で、山岳地帯を経由して番組伝送を行うため、3つの無線中継所を新たに設置しなければならなかった。 瀬戸内海での混信対策  中継局をデジタル化していく中で、新居浜中継局は最も技術スタッフを悩ませた。瀬戸内海を挟んだ広島県の三原中継局のアナログ波と同じ周波数のデジタル波が愛媛県側に割り当てられたため、サービスエリアを確保しつつ、対岸との混信を起こさないということが必須になった。新居浜中継局の出力をめぐって、総務省を交えた愛媛と広島の放送事業者同士の話し合いは難航した。しかし、「愛媛県内はアナログ波と同等のエリアをカバーできる300Wの出力とし、エリア外の三原に到着するデジタル波は、現地でのアナログ受信を妨げないレベルまで下げる」という方針で合意した。 もともと新居浜中継局は、既設のアナログアンテナがあるために、鉄塔に新しいデジタルアンテナを取り付けるスペースが無いという問題があった。自社開発の電波伝搬計算ソフトなどを使って検討を重ねた結果、鉄塔からアーム型に突き出す形でアンテナを取り付けるという解決策を見出した。さらに三原方面への電波を抑制するためのキャンセリング用パラボラアンテナを取り付け、スポット的に電波を打ち消すことにした。2006年8月から試験電波を出し、しまなみ海道伝いに場所を変えながら電波の強さを測定するという作業を繰り返した。測定はアナログ放送への混信を考慮して深夜帯に実施したため、連日連夜の過酷な作業が続いた。計算どおりにはいかない中で、メーカーともども粘り強く調整した結果、松山地区でデジタル放送を開始した翌月には、満足のいくア

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