南海放送50年史
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向かわれる天皇・皇后のお姿と沿道をうずめた市民の歓迎ぶりが、ラジオ東京の芥川隆行アナウンサーによって描写される。午前11時、高鳴るファンファーレで始まった開会式は糸居アナウンサーが実況を担当し、愛媛大学教授相原正一郎氏による聖火入場などスポーツの祭典の湧き上がる躍動感を伝えた。また、会期中には高松、高知へも独自に取材要員を派遣し、郷土選手の活躍ぶりをこまかく伝えた。徳島で行われた高校野球、松山商業対中京商業(現中京高校)の試合は四国放送の協力を得て、夜遅く実況録音で放送するなど、思い切った編成で対応した。5日間はまたたくまに過ぎて、共同デスクの各局や地域の人々から「開局まもないのによくやった」と、積極的な姿勢をほめてもらった。NHKもこの秋季大会には大掛かりな取材陣を送り込んだが、第2放送で午後1時15分からの放送だった。この大会から正式参加した沖縄代表の表情を伝えるなど即時性、臨場感の点でも初陣のラジオ南海は、勝るとも劣らぬ健闘であった。苦労は多かったが、わが社の歴史にとって忘れることのできない1ページである。10月1日の愛媛新聞朝刊にラジオ南海「設立御挨拶」が掲載された。その広告文によれば、ラジオ南海のサービスエリアは愛媛県の大部分、香川、岡山、広島、大分、福岡各県の一部をふくむ西瀬戸内海の広範囲にわたる。エリア内の総世帯数は68万9,751、NHKの受信世帯数は35万6,264、普及率は51.7%である。同日の新聞に松下電器の広告がある。5球スーパーBX710型の値段は11,500円、標準5球スーパーNS-200型は14,800円である。当時の公務員の初任給が8,000円ほどであったから、安い買い物ではない。朝鮮戦争による特需ブームが終わり、不況色が濃くなっていたが、農村景気の上昇や割賦ラジオ普及率は51.7%11第1節「ラジオ南海」の誕生国体会場からの中継

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