義務づけられている2011年7月までの間に、およそ55億円のデジタル投資を想定している。この投資額を前提に収支的なシミュレーションをすると、第76期(2006年4月~2007年3月)の減価償却費は10億円を超え、以後3年間は経常利益段階で赤字決算になる。10ヵ年経営計画には、基幹29局以外の中継局のデジタル化は含まれておらず、長期にわたる多額なデジタル化投資によって、厳しい経営を迫られることになる。創業から現在まで、50年にわたる社史編纂の作業によって、南海放送が胸を張って誇れるものの多くを再発見することができた。それは半世紀にわたって蓄積した歴史の重さであり、ラジオ、テレビ、文化事業を合わせた総合的な媒体力であり、それを支えてきた豊富な人材である。私たちが永年培ってきた大きな財産として、地域社会に貢献することができる自信の裏づけでもある。いま、デジタル化に向かう力量を試されている。デジタル放送への生みの苦しみを乗り越えたあとは、デジタル・ソフト産業としての力を将来にわたって発揮することができる。動きの激しいこれからの10年、そして50年先のローカル民放の将来を的確に見通すことは非常に困難である。しかし、日本テレビ系列のネットワークに支えられ、力を蓄えながら、自立的で、健全な経営による強固な経営基盤を再構築することができるチャンスでもある。南海放送の企業活動の大きな目的は、愛媛エリア唯一のラジオ・テレビ兼営局としての地域貢献であり、株主や取引企業の利益の最大化であり、従業員の生活の安定である。従業員一人ひとりが存分に力を発揮し、全社的な連携をとりながら、地域貢献という企業目的を達成できるよう、これからの50年を的確に見据えて、着実な企業活動を展開していきたい。298第7章 地上波デジタル時代へ
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