1996(平成8)年以降、南海放送スタッフによる二つの技術開発が注目を集めた。その一つは「中波放送エリア自動計算ソフト」の開発で、放送業界をはじめアンテナメーカーから強い関心が寄せられた。従来、放送エリアの算出は大部分が手作業で行われ、愛媛県のように多くの山間部と島々が混在する複雑なエリアでは、計算に膨大な作業を要した。開発したソフトは、建設省国土地理院の国土数値情報をコンピュータに取り込んで放送エリアを自動的に線引きさせるものである。これにより、数か月もかかっていた作業が数分間で処理できる画期的な装置で、各業界からの問い合わせが相次いだ。1997(平成9)年の民間放送連盟賞技術部門で優秀賞を受賞した。このソフトに続いてテレビジョン放送のエリア作成ソフトも開発し、1999(平成12)年には、電波の日に「電波シミュレーションソフトの開発による貢献」として四国電気通信監理局長賞を受けた。一連のソフト開発が認められ、技術局の乗松義弘は、地上デジタル放送開始へ向けた電波法改正のため、郵政省より電気通信技術審議会の地上デジタル放送等置局技術委員会委員に任命された。もう一つの開発は、ヘリコプターや移動車から映像音声を良好に伝送するためのマイクロ波自動追尾装置の開発である。1996(平成8)年に技術局の乗松義弘、池内直之がカーナビに利用されているGPS装置(Global Positioning System)をヘリコプターに搭載して簡易型の追尾装置を開発した。それを発展させ、放送技術本部技術部の乗松義弘、苅山晃典が中心となり、ヘリコプター機内における中継業務をサポートする機能を付加した装置を自社開発し製品化を行った。1999(平成14)年に「FPU自動追尾支援システムの開発」により民間放送連盟賞技術部門で優秀賞を受賞した。前年度の「マルチリモコンの開発」に続いて2年連続の連盟賞技術部門優秀賞受賞となった。二つの技術開発270第6章 経営改革の時代開発された自動追尾装置
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