南海放送50年史
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司馬氏は『坂の上の雲』、『花神』、『ひとびとの蛩音』などの歴史小説、講談社版『子規全集』の編集など、愛媛に貴重な文学遺産を残した。その数多い作品群の中でも、最高傑作とされる『坂の上の雲』は、松山生まれの正岡子規、秋山好古・真之兄弟の三人を主人公に、日露戦争を舞台に明治という時代をひたむきに生きた清冽な青春像を描く長編歴史小説である。昭和40年代に執筆されたこの作品は、戦後の高度経済成長期にあって座標軸を見失っていた日本人に自信を呼びもどすほどの大きな影響を与えるものとなった。司馬太郎氏が精魂を傾けた『坂の上の雲』をみんなで語り合おう。司馬氏の一周忌に近いある日、報道制作本部から「えひめ菜の花忌シンポジウム」の企画が持ち上がった。わが社は「もうひとつの坂の上の雲」シリーズを制作・放送していたが、番組の視聴者から『坂の上の雲』は全国的に知られていても秋山兄弟ゆかりの地を知っている松山市民は少ないと嘆く声が寄せられていた。愛媛放送社長の石浜典夫氏は産経新聞の文化部記者時代に司馬氏の指導と謦咳に接した人である。土居報道制作本部長から地域のメディアの協力で「菜の花忌シンポジウム」を盛り上げたいとの提案に全面的に賛成した。愛媛新聞社今井琉璃男社長の賛同も得られた。1997(平成9)年2月16日午後、本町会館テルスターホールで第1回「えひめ菜の花忌シンポジウム」が開催された。主会場にれた参加者のために、急遽7階のキャッスルホールにモニターテレビを設営して、シンポジウムの進行を視聴していただくほどの盛況となった。第1部の基調講演は文芸評論家尾崎秀樹氏による「司馬248第6章 経営改革の時代「’99えひめ菜の花忌シンポジウム」基調講演は井上ひさし氏正岡 子規

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