南海放送50年史
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ソン・マシーフに登ることになる。北半球と反対にこれからの南極は夏に向かうが、極寒地での高峰登山は想像を絶した。地球の表面を薄く覆っているオゾン層にフロンガスが原因とみられる穴がすでに南極大陸上空で観測されていた。地球環境を考える番組としても、すばらしいテーマだった。南極大陸を撮影する白川義員氏のメッセージをとおして、欲望のままに地球を汚染している現代社会への警告を伝える。森巌報道制作本部副本部長が企画素案を書いた。常務会にはかった結果、わが社の創立40周年記念事業の幕開けを飾るにふさわしい特別番組として制作し、日本テレビ系列の全国ネットワークとして提案する方針を決定した。また、極地取材に卓越したキャリアを持つ日本テレビのチーフプロデューサー岩下莞爾氏に指導を仰ぐことになった。報道制作本部制作部田中勝利、映像取材部大塚進の両副部長が取材に名乗りでた。二人は6年前、パキスタンで仏教の源流を撮影中の白川義員氏を追って、ドキュメンタリー番組を制作した経験があった。「いつか南極へ」と砂漠で白川氏と話し合った夢が実現した。サポーターには日本山岳会から上智大学の学生石川慶英君の推薦が得られた。南海放送隊は極寒地で使用する機材の準備、耐寒訓練などを積んだのち、12月23日、成田空港を飛び立った。ロスアンゼルスからチリ・サンチャゴを経由してチリ南端の町プンタアレナスに到着した。ここで南極入りする科学者などのためのツアーコーディネーター社CEIが斡旋したプロペラ双発機に乗り12月30日、南極半島の付け根にあるパトリオット・ヒル基地に無事到着した。文字通り白一色の氷の世界だが、めずらしく穏やかな天候がつづき、日中の気温は-9度。半白夜で、10時を過ぎても明るい。白川氏との合流が1日延びて1月6日になった。日程に余裕ができたので、元日の朝、セスナ機で片道1,100キロを飛んで南極点を訪問した。この年は白瀬探検隊の南極到着80周年、昭和基地開設35周年にあたった。アメリカ観測隊の拠点となっているアムンゼン・スコット基地でオ201第2節 創立40周年取材地点 昭和基地 南極点(2800) Mtビンソン (4897) アムンゼン・スコット基地(USA) パトリオット・ヒル ロンネ棚氷 ウェッテル海 南極半島 キングジョージア島 アルゼンチン チリ プンタアレナス 白瀬海岸 ロス棚氷 ロス棚氷 ロス海

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