南海放送60年史
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2第1節 本社と親局の移転ため天井を取り払い、スケルトン構造とした。それでも、サイマル放送に対応するには、スペース的に不安があった。実際、従来のアナログ放送送出システムは映像設備と音声設備を別々に構築し、別処理を行って送出していたため、大量の配線を必要とした。しかし、映像信号の補助データ領域に音声信号を多重する映像・音声多重システム(エンベデットシステム)が開発され、省スペースでの収納が可能になった。NECネッツエスアイ㈱、㈱きんでんをはじめとする関連業者は、2ヵ月以上常駐して作業を続けた。 また、VTRでの番組送出のためには、収録・プレビュー・再生と、当時高額であったVTR機器を多数購入する必要があり、CMはデータベースで、番組はVTRでという選択をする放送局が多かった。しかし、サーバー性能が向上してきたため、比較的ローコストで安定した運用が見込まれるCM・番組統合バンクシステムを採用し、VTR機器の台数を最小限にとどめた。デジタル化に伴う急速な技術進歩によって、サイマル放送とワンセグ放送の設備、そしてCM・番組統合バンクシステム、さらにはマスターサブがマスタールームにコンパクトに収納された。 5月には、7階のニュースサブへの機器搬入を行い、SNGのパラボラアンテナを屋上に吊り上げた。8月7日にはアナログ放送の切り替えを終え、午前5時15分に当社のすべてのテレビ放送が本町会館(メディアパーク)のデジタルマスターからの送出となった。 日本テレビ系列の共同発注グループの中では、最も遅い切り替えスケジュールになったため、データ放送やワンセグ放送も同時に開始され、フルサービスでのアナログ切り替えになった。旧本社で1991年から放送を続けていた旧マスターは8月9日にその役目を終え、火が落とされた。 行道山にデジタル親局新設  松山市と周辺地域を含めた約24万世帯にデジタル放送波を新マスタールーム

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