南海放送50年史
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は、テレビ番組『NNNドキュメント’81・詩の中の子どもたち』(担当・薦田高士)である。心を閉ざしたままにみえる知的障害をもつ子どもたちに、清冽な感受性の世界があった。番組のナレーターに起用した二木てるみは、その感動を「生まれたてのような言葉の数々に接し、心が洗われるような思いです」と語っている。作曲家池辺晋一郎氏も、仲野猛先生が編集した詩集『どろんこのうた』(合同出版)を読んで深い感動を受けたひとりであった。新しい児童合唱作品のための企画を考えていた池辺氏はこの年の夏、野村学園を訪ねた。子どもたちと一緒に粘土をこねて陶板を作ったり、遊んだりしながら、合唱組曲『子どもたちのための合唱組曲・どろんこのうた』を完成した。NHK合唱コンクールで第1位となった愛媛大学附属小学校コーラス部の児童たちが小川俊彦先生の指導の下で猛練習をかさねた。聖カタリナ女子短期大学の音楽ホールで行われた録音は、8時間に及んだ。その熱心な指導と努力が、小学生による合唱の芸術祭入賞という奇跡を生んだ。この番組をプロデュースした放送部長、森教子は、翌年には結成20周年を迎えた松山市民合唱団のために、混声合唱組曲「異聞坊っちゃん」を制作、1983(昭和58)年11月13日芸術祭参加作品として放送した。夏目漱石の原作からユーモラスな伊予なまりを活かして「松山到着」、「清への手紙」、「人物往来」など5つのパートからなる脚本を新進作家金子成人氏が書き、池辺晋一郎氏が梅津寺ホテルに缶詰となって作曲、アマチュアの集団である松山市民合唱団を指導した。この作品も同年度芸術祭優秀賞を受賞、わが社にとって3年連続、『わが兄はホトトギス』以来5度目の芸術祭受賞となった。1982(昭和57)年にはこのほか、テレビドキュメンタリー『山のエッセー・石鎚1982』、『鵜づな人生』、ラジオ番組では1981年の『非行、その論理』、『ブルースに憑かれた若者たち』、135第3節 転換期の時代と放送一緒に粘土板をつくる作曲家池辺晋一郎氏どろんこのうた・愛大附属小学校生のコーラス

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